「年を取ってきたら身の回りの小物をすべて本革で揃えたくなるんだよ。」
新社会人になったとき、ある日先輩からこんな話をされました。
あの時は気にも留めなかったのに、ここ最近は革の良さを身に沁みて感じるように。
気がつけばあの当時の先輩と、今の僕の年齢が近くなってきたんだなぁと。
でも、物欲の赴くまま手当たり次第に革製品へ買い変えるには、
高い・・・高すぎる・・・!!
財布、靴、ベルト、バッグ、手袋、スマホケース、ちょっと良い物にしようと思えば数万円〜数十万円が飛んでいきます。
一生ものだと思えば安いのかもしれませんが、貧乏サラリーマンの僕には中々踏ん切りがつきません。
ということで冒頭から少し長くなりましたが、今回は革製品の値段のお話です。
革製品は高いよ
本革は昔から高くて当たり前、というような風潮があります。
「良い物だから高い。」
わかる、わかるんだけど、何を基準に良いものと言っているのかがわからない。
たしかに革は加工が面倒くさいから多少高くてもしょうがないかな、と思える部分はあります。
それでも同じような品物が2~3倍近く値段が変わるのっておかしくないでしょうか?
革製品の値段の決まり方
- 素材費
- 人件費
- 広告費
財布の販売価格の大まかな内訳です。
ほかにも運搬費や運営費などがかかってきますが、分かりやすくするために省略しました。
各メーカーごとの値段に差が出ているのも上記3点によるところが大きいですからね。
(※革製品以外にも、世の中に出回る品物のほとんどに通じる考え方だと思います。)
革素材の値段の差について
大きく値段が変わるのがここ。
同じ牛革でも、鞣し方(なめしかた)によって、値段が全然違ってきます。
この2つは製法の違いなのですが、かかってくる手間や時間が大きく変わってくるので値段も全然違います。
同じタンニン鞣しの革でも、出している革業者(タンナー)、使われている部位、牛の年齢、によっても全然値段が変わってきます。
レザークラフト屋さんを覗くとある程度は革の値段を予測することができますね。
鞣し方の違いは値段の違い
- タンニン鞣し
- クローム鞣し
革の鞣し方は、大きくわけるとこの2種類があります。
タンニン鞣しは昔ながらの鞣し方で、少量生産な上に時間も手間もかかります。
逆にクローム鞣しは大量生産向きの鞣し方なので、短時間で大量に作るのに向いています。
ヌメ革という表記の革製品が高くなっていることが多いのですが、このヌメ革がタンニン鞣しの革ということです。
床革はめちゃ安い
革の銀面、床面って聞いたことがありませんか?
- 銀面(ぎんめん):革の表面
- 床面(とこめん):革の裏側
こんな感じで呼び方が違うんですけど、銀面を取ったあとの余った部分を床革(とこがわ)と呼びます。
床革には銀面がないので強度が弱いし、そもそも捨てられるものなので値段も安いんです。
この床革の表面を塗料で塗って従来の革っぽく仕上げたものが、巷に出回っている激安本革になるわけです。
1000~3000円ぐらいの革ベルトや革財布は、ほぼ床革ですね。
本革というのは嘘ではないですが、革としてアジを楽しんだりすることはできませんし、手入れをして長く使うのも難しいです。
高くなるのは革素材だけじゃない
こだわろうと思えば、ファスナーやバネホック、縫い糸まで高価なものが存在しています。
通常のファスナーなら200円程度でありますが、YKKの最上級エクセラだと素材だけで2000円前後になります。
バネホックもイタリアのFIOCCHIを使えば高価になりますし、縫い糸に関しては知りませんが、やはりピンきりだと聞いています。
レザー専用のミシンなんかもビンテージじゃないと厚物が縫えないとかで50万を超えるものがあり、そこも素材代に乗ってくるところだと思います。
人件費は大事です
- 職人
- デザイナー
職人系ブランドのところだと、デザイナーと職人と販売を1人でこなしている人(ネット販売がメインのところなど)もいて、掛かる費用を安く抑えることができます。
革製品は最終的に、切る、貼る、縫う、ぐらいなので言い方は失礼ですが、素人でも作ろうと思えば作れます。
実際にメルカリやヤフオクなどでは素人作品が売られていますよね。
ただ、熟練のデザイナーさんと熟練の職人さんが作った品物と、初心者が作る品物では雲泥の差があるのは想像に難しくないでしょう。
歴史の長いブランドには、積み重ね研鑽されてきた技術があります。
これが値段にも反映されるのです。
広告費も馬鹿にならない上乗せ費用
みんなが嫌いな広告費。
「広告に回すなら、その分素材に使って良いものを作ってよ!」
なんて、みんなが一度は思っちゃいますよね。
でも、広告って案外バカにならなくて、広告がなければ売れていないブランドもたくさんあります。
物が溢れすぎている世の中なので、ただ良い物を作っているだけでは認知されにくいんですよね。
ハイブランドでは広告費が製品価格の30%を超えているものもあるようです。
革製品に高い金額を出すのはどうなの?
「じゃあ、革財布の価値って原価だけなの?」
となると、それもどうなんだろう。という話になりますが、それぞれのブランドのスタンスによっても大きく変わりますし、なにより買った人が満足できるかどうか、ですよね。
欲しいという気持ちが大事
それに革財布は、品質と値段だけを見れば良いというもんでもなく、他にも見るべきところはたくさんあります。
例えば、
「僕は女性にウケる財布じゃないと絶対に買わないし、貰っても使いません。個性の無い財布は冠婚葬祭用にしか使わないことにしています。」
そういう選び方をしているならコスパなんて無視して、採算度外視で選ぶしかありません。
「これほとんど広告費なんだろうなぁ」
と思ってしまっても、欲しい財布は認知度の高い財布なわけです。
革財布ブランドを例に出してみますね
「俺は満足できる財布なら多少高くても買うぞー!」
ということで、革財布サイトならではの、革財布ブランドごとに値段の開きがでる理由を考察します。
ブランドによって値段が決まる理由をそれぞれ(無理やり)考えて出してみました。
- 職人系ブランド
- 工房系(ファクトリー)ブランド
- デザイナー系ブランド
- ファッション系ブランド
- ハイブランド
- ボリューム系ブランド
革財布を作っているブランドを、僕はこんな感じで分けています。
{※正しい呼び方ではないので悪しからず。)
それでは上から順番に見ていきましょう。
職人系ブランドの特徴
僕が勝手に職人系ブランドと呼んでいますが、これは職人さんが1人で運営しているブランドをイメージしてください。
工房から独立したり、レザークラフトの延長で店を出せるようになったりと、職人さんにも色々な事情があるので、そうした背景も一緒に楽しめるのが魅力です。
実店舗に行けば、財布を作ってくれる職人さんと話ができるので、一番身近に感じることができますしね。
こだわりを持って作成されている人が多いので、無骨で丈夫な財布が多い印象ですね。
値段の違いはどこから?
- 素材費:★★★★★(高い)
- 人件費:★★☆☆☆(安い)
職人さんが仕入れられる革の量に限界があるので、素材の費用が他の業態よりも割高です。
使っている革の種類を抑えたり、大量生産をこなす工夫をして値段を下げる努力をしています。
人気が出たり、リピーターがつくまでは大変なように見えますが、人を雇わなければ利益がトントンでもなんとかなるみたいです。
工房系(ファクトリー)ブランドの特徴
職人系ブランドとちがって、チームで運営しているブランドです。1人じゃないので量産ができるというメリットがありますね。
職人集団として立ち上げられた工房や、パートのおばちゃんで持っているような工房まで上下のレベルが幅広いです。
小さな工房で家族経営で作っているところもあったりして、そういうのを知ってしまうと一気に親近感が湧くこともありますよね。
なぜか工房という言葉にワクワクを感じるのは、秘密基地のような雰囲気を感じるからでしょうね。
値段の違いはどこから?
- 素材費:★★★☆☆(普通)
- 人件費:★★★☆☆(普通)
職人+数人の小規模なブランドというイメージで、役割分担をはたすことで作業効率をあげて、商品代金を抑えていく感じでしょうか。
少し大きな工房になってくると店舗を併設したり、商社をかまして各種方面に展開したりしていますよね。
個人の時よりも生産量が増えるために素材費用は抑えられそうですけど、その分人件費が掛かってくるのと、良い職人を抑えられないとキツそうです。
デザイナー系ブランドの特徴
カテゴライズが難しかったのですが、見出しだけでなんとなく分かってもらえると思います。
とにかくデザイナーの感性が爆発しているものが多く、クリエイティブと何とかが紙一重のところにいることが多いです。
「使い勝手なんてまったく考えてないよね」っていうレベルの商品から、「こりゃーすごい、感動した!!」という商品まで様々です。
見ているだけでも楽しいのですが、ジッと見てると欲しくなってくるので困ります(笑)。
値段の違いはどこから?
- 素材費:★★★★☆(高い)
- 人件費:★★★★★(高い)
間違いなく、デザイン料+アイデア料の割合が大きいでしょう。
また他にもマニアックな素材をふんだんに使ったりするので、素材費用も大きそうです。
アーティスト気質な人が多いので、採算度外視でやってそうなイメージに見えます。
ファッション系ブランドの特徴
ファッション系・・・つまり、革質にこだわるよりも、デザインを重視しているブランドのことですね。
僕以外にこの呼び方をしている人はいないと思うので、他言無用にしておいてください(笑)。
女性向けのブランドに多いのですが、その呼び方の通りファッション要素が強いので、色んな服装に合わせることができて便利で使いやすいです。
流行を取り入れるのがうまく、毎年新作が出るのを心待ちにしているファンが多いのも特徴ですね。その反面、ずっと同じものを使っていると古く見られることもあるので注意が必要です。
こういうブランドを嫌う人も多いけど、僕はミーハーなので結構好きなほうです!
値段の違いはどこから?
- 素材費:★☆☆☆☆(安い)
- 人件費:★★★☆☆(普通)
ファッション系ブランドは大量生産の恩恵で、安いところが多いです。
基本的には業務委託だったり、自社で大きい生産工場を持っているので、ドバっと作ってドバっと売っていますし。
ほかにも海外で作って、値段だけで勝負しているブランドもあります。
【参考】
・JAM HOME MADE
・キーファノイ
・クリード
ハイブランドの特徴
言わずと知れたの高額商品のオンパレードです。
一応、ハイブランドの中にも格付があるようなのですが、庶民の僕にはイマイチよく分かりません。
ハイブランドが好きな人は2種類に分かれていて、
- ブランドの持つ歴史が好きな人
- ブランド名で見栄が張れるから好きな人
生まれながらにお金持ちな人ほど前者の傾向が強いです。
値段の違いはどこからくるの?
- 素材費:★★★★☆(高い)
- 人件費:★★★★★(高い)
ハイブランドの場合はブランド料が大きいといわれていますけど、実際のところはブランド料の割合がどれくらいなのかは公表されていません。
革質の良さで有名なエルメスは自社で牛やクロコダイルを育てたり、タンナーを所有していたりするのでそれらの維持管理費用も必要ですし、世界トップクラスの職人を雇うのにも人件費がかかります。
ハイブランドは、その歴史を守るために努力をしているからこそハイブランドなのです。そのぐらいの金額を気持よく払える男になりたいと思っています!
ボリューム系ブランドの特徴
大量生産によって安く提供できているブランドを、僕はボリューム系ブランドと呼んでいます。
中国などでドドーンと大量に作って日本で捌いているようなところもありますが、国産にこだわりながら値段を抑えているブランドもあります。
とくに↓下記3ブランドが海外に拠点を移さないのは、国内の職人の雇用を守るためだったりして、隠された理念に共感してしまいますよね。
ポーターとココマイスターは委託生産という形を取っていて、職人さんの仕事が無くならないように工夫されています。
値段の違いはどこからくるの?
- 素材費:★☆☆☆☆(安い)
- 人件費:★★★☆☆(普通)
素材を大量購入することによって、費用が極限まで下げられています。
「たくさん買うから安くしてよ。」というのをボリュームディスカウントというのですが、ある程度販売力がない在庫を抱えたまま潰れてしまうため、どこのブランドでもできる技ではありません。
良いものを安く手に入れたいならボリューム系ブランドを選ぶといいです。
多くの人が持っている反面、コストパフォーマンスは最強クラスです。
まとめ
良い物は高い。
そして、高いには高いなりの理由がある。
革製品は「いいなぁ」と思って手にとって見てから、値札を見てビックリしてしまうことがあります。
たくさん集めたくなる気持ちもありますが、1つ買ったら長年使えるので、無理をせずにゆっくり揃えていきたいですね。
手入れや修理で長く使えるのも革製品の魅力ですから。