エイジングを求めている上級者から、革が初めての初心者まで、万人が使える最強の革といえばブライドルレザーです。
「手入れがネックで革財布が買えない。」
「革は扱いが難しいからちょっと・・・。」
というような人でも安心して使えるのが魅力ですね。
- 丈夫に作られていて長く使える
- 手入れの回数が少なくてすむ
- 使い込むことでツヤのある経年変化が楽しめる
堅牢で加工が難しいため取り扱っているブランドは少ないですが、じつは革財布のためだけに作られたような性質を持っているのです。
ハリのある硬めの革なので慣らすまでに時間がかかりますが、そのぶん多少乱暴に扱っても耐えてくれる頑丈な革なのです。
というわけで、ここでは少し特殊な革「ブライドルレザー」が普通の革と違う部分を中心に説明していきますね。
関連記事:ブライドルレザーの革財布をメンテナンスしてみたよ!【簡単お手入れ術】
みんなの知らない革知識シリーズ
ブライドルレザーを選ぶメリットとは?
ほかの革と比べてブライドルレザーのメリットというと、
- 耐久性に優れている
- 独特の経年変化がカッコイイ
というところがあげられます。
硬さがあるので型くずれにも強く、薄く作らなければいけないビジネス向け革小物にもよく使われているんですよ。
アジが出るまでに時間はかかりますが、それは長く使えることを意味しています。
使ったぶんだけ愛着を持つことができますね。
じつはタンニン鞣し革
その堅牢さから特殊な革じゃないかと思われているブライドルレザー。
じつはタンニン鞣し革の一種なのです。
作っているのはイギリスのタンナーが多く、実際に現場を見たわけではないですが、その性質からいってたぶんピット鞣しに近いのではないかと想像しています。
そしてタンニン鞣しの魅力といえばエイジング!
そう、エイジングもバッチリこなしてくれるのがブライドルレザーなのです!
購入時のブルーム(白いロウ)が新品の証
ブライドルレザーの商品を買ったとき、革表面にブルームと呼ばれる白い蝋成分が浮いています。
ブルームこそがブライドルレザーの証なのですが、使っているうちに取れてしまって新品のときしか見れないのが特徴です。
そして、職人はブルームを取らないように加工しなければいけないため、じつはとても職人泣かせなのです。
ビッシリとブルームが浮いていることで、誰の手にも染まってない新品ということがわかって気持ちいいですよね。
ブライドルレザーは表面が削られている
ブライドルレザーは、オイルを入れる前に革の銀面(表面のこと)を削っています。
蜜蝋と獣脂を混ぜ合わせた「ブライドルグリース」と呼ばれるブライドルレザー専用に調合された油脂でなめしていきます。
先に表面を削っておくことで、ブライドルグリースが染み込みやすくなるんですよね。
なので、一般的な革とは違って純粋な革表面のシボというのは削り取られてツルツル(スムース)しているのが普通です。
もともと馬具として作られたブライドルレザー
ブライドルレザーが財布などの革小物に使われはじめたのはここ10年ぐらいのことで、それ以前は馬具用の革として使われていました。
そもそも、ブライドル(Bridle)というのは、馬の手綱(たづな)や、馬勒(ばろく)といった意味です。
馬は、1馬力っていう言葉が生まれるほど力が強いです。
上記画像を見てもらえればわかりますが、馬具はとくに負荷のかかる部分に使われています。相当頑丈でなければ千切れてしまいますよね。
おまけに、馬のヨダレや突然の雨など、革の大敵とされる水を避けることもできません。
ほかの革と比較すると、ブライドルレザーにはガッツリとハードに使われてきた歴史があるのです。
堅牢性の秘密
ブライドルレザーは、「タンニン鞣しの革」に「各タンナー秘伝のグリース(蜜蝋やオイルを混ぜたもの)」を何度も何度も塗りつけて仕上げられます。
グリースが内部まで浸透した革は抜群の強度を誇るので、馬具に使えるほどの堅牢性を手に入れるのです。
(※カサカサに乾燥した革よりも油分が染み込んだ革のほうが圧倒的に強いです)
市場に流通している皮革の中ではトップクラスに頑丈なので、縫製が難しく職人泣かせな側面もあったり。。。
もちろん買って使い始めてからも馴染むまでに時間がかかります。
その代わり、ブライドルレザーの経年変化は素晴らしく、とくに使い込まれると深い光沢を放ちます。
長年かけて育てていく、革の魅力を最上級に楽しめるのがブライドルレザーなのです。
とても堅牢な革だよ
ブライドルレザーは、イギリスで数百年間変わらず使われている伝統的な革。
昔ながらの作り方になるので、革一枚作るのにものすごく時間がかかってしまう反面、強靭な強さがあります。
牛革の中でも身の詰まった丈夫な部位「ベンズ(背中)」「ショルダー(肩)」をメインにするのも特徴。
タンニンで鞣したあと、とても長い時間をかけて油脂(ブライドルグリース)を染み込ませて作られます。
油脂を染み込ませる期間はタンナーによっても違いますが、およそ5ヶ月~1年ほどかかるようです。
フルグレインブライドルレザーという銀面を削らずに残したまま鞣す方法だと、1年以上かかる場合もあるようですね。
ブライドルレザーの見分け方
- 表面に白い粉のようなもの(ブルーム)がついている
- 表面がスムース(ツルツル)になっている
ブライドルレザーの見た目には、このように2つの大きな特徴があります。
新品の状態だと大体白っぽくなっているのでわかりますが、使い込んだ状態だとわからないかもしれません。
エイジングしたときのツヤの出方が独特なので、革が好きな人はどの状態でも見分けられるはず。
というわけで、細かい説明は以下に続きます。
特徴1:表面に白い粉がついている
ブライドルレザーが使われた製品をよく見ると、表面に白い粉のようなものがついています。
白い粉のことを一般的にブルームと呼ぶのですが、ほかに古い呼ぶ方でタロウと呼ばれることがあります。
これはなにかというと、ブライドルレザーをなめす時に使われた蝋が浮き出てきているんですね。(後から塗り足すこともあるそうです。)
粉のようなものといっても中身はロウなので、当然触るとヌメっとしていますが、使っているうちに取れてきます。
※ブルームの意味
ちなみに、ブルームの意味としては、
■チョコレートの表面に成分が析出し、白く固化する現象
- ファットブルームまたはオイルブルーム - 油脂が析出
- シュガーブルーム - 砂糖が析出
■ブルーム (果実):成熟した果実の表面に生じる白い蝋状の物質
~Wikipediaより引用~
ということのようです。
よく勘違いされるのが、革にブルームを染み込ませたのがブライドルレザー、というもの。
実際には革の表面に浮いてきた白いものをブルームと呼びます。
特徴2:表面がスムース(ツルツル)になっている
ブライドルレザーはほかの革のように、型押しだったり、シボがついていたりということはなく、表面に模様をつけられることはほとんどありません。
ツルツルのスムース仕様です。
使い込むとツヤ感がほかの革と全然違うのは、革表面のシボ模様がないからなのですね。
ブライドルの表面が平坦になっている理由としては、
「鞣す段階でオイル(ブライドルグリース)を浸透させやすいように、革表面にバフがけ(ヤスリがけ)をしている」
というのが大きい原因でしょう。
素材が硬いので型押しにすることもほとんどなく、僕が知っている中でブライドルレザーの型押しを扱っているのはWhitehouse Coxだけです
コードバンとブライドルレザーの違い
ブライドルレザーの財布を使っていると、「あれ、その財布コードバン?」なんて聞かれたりすることがあります。
「ブライドルレザーは牛革、コードバンは馬のお尻の革。」
まぁ、細かい素材の違いはあるにしても、相当な革好きでない限りは見た目だけでわからないはず。
両面ブライドルレザーの財布と、両面コードバンの財布、両方とも黒色を持っていますが、並べてみてわかるぐらいの差しかありません。
コードバンの財布が欲しいけど値段の関係で手が届かない人は、両面ブライドルの財布にするのもアリですね。
コードバンとの大きな差はシワ
じつはコードバンって細かなシワがほとんど入りません。
ほんと不思議なんですけど、ハードに使われる革靴とかでも小さなシワが入っているのを見たことがないです。
ということで、革財布でブライドルレザーとコードバンを見分ける簡単な方法は、財布の縁についたシワを見てみてください。
シワ有りはブライドルレザー、シワ無しはコードバン。
これが一番カンタンかつ直球で見分けられます。
水分への耐久力はブライドルレザーが圧勝
見た目が似ている、ブライドルレザーとコードバンですが、じつは素材自体の性質が違います。
コードバンは水に弱いため、雨などの水滴が当たると水ぶくれという現象を起こすことがあります。
「財布に気を使いたくはないけど、カッコ良いヤツが欲しい!」
ということなら、ブライドルレザー一択ですね。
とはいえ、ブライドルレザーも水滴をずっと放置しているとシミになって取れなくなります。
耐久力が高いだけで防水性があるわけではないので、気になるなら防水スプレーを振っておきましょう。
ちなみに、素材の関係でコードバンには防水スプレーができないため、定期的なワックスで耐水性を高めることになります。
ブライドルレザーの手入れ方法
個人的にはコロニルの1909シュプリームクリームでケアするのをオススメしています。
とくにブライドルレザーは丘染めが多く、長く使っていると色落ちもあるので、色付きのクリームを使うとキレイになります。
ほかにもブライドルレザー専用のレザークリームもあったりするので、色々試して自分にあったものを探してみるのも楽しみの1つですね。
ぶっちゃけ、ブライドルは堅牢なので失敗することはほとんどないと思います。
▼僕の財布の手入れ方法
≫【ブライドルレザーの手入れ】1年間エイジングさせまくった二つ折り財布をメンテ!
▼僕が後輩の財布をメンテナンスしたときの記事もあるので、こちらも参考にしてみてください。
≫ ブライドルレザーの財布をメンテナンスしました
手入れの頻度はどれぐらい?
手入れの頻度は人それぞれですが僕の場合は、革の表面が軽くカサついてきたら「うーん、そろそろやろうかな。」という感じです。
他の手持ちの財布やブーツの手入れタイミングが季節の変わり目に多いので、同じタイミングで手入れすることが多いですね。
基本的には2ヶ月~4ヶ月ぐらいの間隔がベストでしょう。
また、いままで何人かの財布を見てきましたが、黒以外のブライドルレザーの場合は乾燥すると汚れを吸い込みやすい気がします。
偶数月の初週にクリームを塗る、みたいな習慣を作っておくといいかもしれません。
クリームを塗りすぎるとヤバい?
クリームを浸透させるとコシが無くなると言われている件について、限界まで吸わせて実験してみましたがとくにコシが無くなることはありませんでした。
(※手持ちの様々な革で実験しまくみましたがコシがない状態を再現できなかったので誰か情報があれば教えてください)
もともとコシのない革を薬剤などで硬くしているものなら、クリームを塗りすぎるのはよくないかもしれません。
しかし、革財布に関してはそういう小細工をしていることがほぼないため、厚塗りしてもムラになるぐらいで終わります。
油分を浸透させていくと、その革が元の状態(鞣されたとき)に戻っていきます。
ただ、水分には弱いので、水分の多いクリームに関しては気をつけてください。
ブルームは落とす派?落とさない派?
先ほども少し触れましたが、買ったばかりのブライドルレザーの財布には「ブルーム」という白い粉のようなものが浮き出ています。革の種類によっては無い場合もあります。
ブルームは革の中にあるワックスが浮き出てきたものです。
とくに理由がない限り最初に磨いて取ってしまった方がいいと思います。服やズボンに付くと、元がロウなため取るのに苦労しますから。。。
柔らかい布で優しくこするとスルスルと落ちます。すごく簡単ですね。
ブルームの正体はロウなので熱がかかるように圧を掛けながらこすれば早めに溶けて落ちますが、熱で革が痛む可能性もあるので力加減に気をつけてください。
あと、よく聞かれるのですが「一度ブルームを落としてしまうと復活はできない」ので、慎重に決断してください。
▼購入時のレビューに、少しですがブルームのことが載っています
≫【画像多めレビュー】ココマイスターの二つ折り財布「インペリアルパース」購入!
財布の防水加工はどうする?
財布を汚したくない人は防水スプレーを使う人も多いですよね。
個人的には、ブライドルレザーへ防水のためにスプレーを使うのは必要ないと思っています。
革に油分があるため、ある程度は水を弾きますので。
- よく汗をかく人
- 汚れる可能性がある場合
などは、防水スプレーをした方がキレイな状態を保てるかもしれません。
革財布に使うのなら防水スプレーは、水分を弾く効果よりも、汚れをつけない効果のほうが高いと思います。
ブライドルレザーを作っている業者(タンナー)の話
ブライドルレザーはイギリス発祥の革なので、やはりイギリスのタンナー(革業者)が多いですね。
とくに有名なのがセジウィック社(J&E Sedgwick社)。ここは歴史のある超名門タンナーです。
なので、通販の革小物を眺めていると、このセジウィック社のブライドルレザーをよく見かけるはず。
ほかにもグレード社やベイカー社など、それぞれ個性的なタンナーがあります。
≫ タンナーを知らずして革を語ることなかれ!世界のタンナー一覧
ブライドルレザーの革財布を作っているブランドは?
ブライドルレザーは加工が難しいため、販売しているブランドはあまり多くはありません。
日本のブランドなら、
- ココマイスター
- 土屋鞄
- 万双
- GANZO
などが有名です。
イギリスのブランドだと、Whitehouse Cox、エッティンガー、グレンロイヤルからなる英国御三家が有名ですよね。
なおイギリス以外のブランドで、ブライドルレザーを取扱っているのは見たことがないです。
▼僕はココマイスターのブライドル二つ折り財布を使っています。かなり変化するのでオススメですよ。
≫ 【レビュー】ココマイスターの二つ折り財布 インペリアルパースを買ったよ
エイジングがカッコイイ!
ブライドルレザーはヌメ革などと同じで、基本的にはタンニンなめしの革です。
なのでエイジング(経年変化)も期待できるんですよ。
硬いので馴染むまでにすごく時間がかかるのですが、それがまた楽しいんですよね。
個人所有の財布のレビューも
ビジネス用革財布の中では、ブライドルレザーのエイジングがピカイチ。
使い込むことで艶も出てきますし、手入れが少なくてもカッコよく変化していくため、革の良さを思う存分堪能できます。
正直、買ったばかりのころは硬すぎて大丈夫かな?と思っていましたが、3ヶ月目あたりから変化を感じてきました。
僕の財布は、表面:ブライドル、裏面:ヌメ革、なのですが、手入れ無しでも思わずニヤついてしまうぐらい変化しています。
ブライドルレザーまとめ
ブライドルレザーはとにかく頑丈なので、長く使えるいい革です。
が、硬い分だけ経年変化もゆっくりです。長年気長に付き合っていく覚悟が必要かもしれません。
なので、「丈夫でいつまでも使い続けられる革財布が欲しい!」といった人にオススメの素材だと思います。
普通の革から比べると、ワンランク上の素材という扱いなのもわかる気がしますね。