最上級の革といえばコードバンですよね。
革のダイヤモンドと呼ばれることもある高級感あふれる風格。
一言で表すなら「耐久力の高い高級な革」です。これを超える革はそうそう存在しません。
ということで今回は、
- 初級編:じつは種類があるんだよ
- 中級編:コードバンの特徴
- 上級編:質感の高さはどこから来るの?
の順番で、コードバンを詳しく解説していきましょう!
▼コードバンの工場見学に行ってきました。
⇒【レポート】コードバンってどうやって作られるの?新喜皮革へ見学に行ってきた話
みんなの知らない革知識シリーズ
購入前に知っておいて欲しいコードバンの弱点!
コードバンの説明をする前に、2つだけ知っておいて欲しい話があります。
それはズバリ、
- キズに弱い
- 水に弱い
ということです!
▼水と傷の弱さについてはこちらの記事も参考にしてみてください
https://77f.info/cordovan-care/
・キズに弱いって本当?
コードバンは革の中でも最高クラスの強度を持っていますが、普通に使っているとキズはそれなりにつきます。
硬い革のメリットは薄く作れることで、キズ防止効果があるわけではないからです。
ぶっちゃけると、どんなに硬い革でも爪で強くひっかくだけでキズはできてしまいます。
クリームを使って手入れすることで目立たなくすることはできますが、新品状態まで持っていくのは不可能です。
キズに特別弱いということはありませんけど、特別強いということもありません。
・さらにいうと水にも弱い
コードバンは耐水性がなく、雨などの水滴が当たればその部分に水ぶくれ(銀浮き)が起きます。
これはコードバンの構造に由来しているので、高級な革だから丈夫だと思って雑に扱っていると痛い目をみます。
なのに、コードバンは構造の問題で防水スプレーが使えません。
もし水ぶくれができてしまうと消すのに相当根気が必要になるため、自信のない人はほかの革にしておいた方がいいでしょう。
とはいえ、ワックスを塗ることである程度の耐水性は確保できますので、マメに手入れができるなら丈夫です。
水ぶくれが出来た場合は?
もし水ぶくれができても諦めないでください。
実際に自分でも試してみたのですが、ツルツルしたもので根気よく擦っていけばほとんど元の状態に戻ります。
一昔前はアヴィレザースティックというのが水ぶくれ消しの定番で、今はかっさ棒という似たようなものが安く手に入ります。
コードバン革靴の人たちは突然の雨降りにやられることが多く、常に水ぶくれと戦っているため、そういう界隈で情報を集めるといいかもしれません。
初級編:コードバンには種類があるんだよ
同じコードバンの財布なのに、店によって値段に差があるのってとても不思議ですよね。
じつは、安いコードバンと高いコードバンの値段の違いって、コードバンの種類が違うわけです。
ということで、ザックリと僕が把握している種類が下記です。
- ホーウィン社のオイルシェルコードバン(最高級)
- 新喜皮革の水染めコードバン(ミドルクラス)
- ウレタン染めコードバン(牛革とほぼ同じ)
- コードバンではない何か
もしかしたらもっと種類があるかもしれませんが、たぶん財布に使われているのはこれぐらいだと思います。
人気があるのは1番、2番ですね。あっという間に売り切れてしまいます。
3番は量産ができるため量に余裕がある感じで、希少なコードバンの名前を語っている別物でしょう。
4番は・・・ランドセルとかで使われている雰囲気重視のアレです。酷いものだとコードバンカラーのことなのにコードバンっていってたりしますよね。
コードバンのピット鞣しは2社だけ
革を鞣すときの手法として、「ピット鞣し」と「ドラム鞣し」の2つの方法があります。
ピット鞣しのほうが高価な鞣し方になるのですが、設備の関係で所有しているタンナーがほとんどないため、現在はドラム鞣しが主流です。
しかし、アメリカのホーウィン社と日本の新喜皮革は、ピット鞣しの設備を持っている数少ない会社なのです。
ピット槽は維持するのが難しく、世界でも数社しかないほど数が少なくなっています。
牛革ですらもピット鞣しで作られた革ですら大変貴重なわけで、ピット鞣しコードバンなんて本当に貴重な代物になっているわけです。
年々希少なものになっていくコードバン
コードバンの主な使い道ってご存知でしょうか。
じつは、革靴なんです。財布ではなかったのです!
そしてコードバンで作られた靴の需要が年々増えているため、革財布までコードバンが回ってくることは減っているそうです。
素材が減っているというよりも、タンナーが年間で作られる数が決まっているので増えた需要に対応しきれない感じでしょうかね。
ちなみに、コードバン素材が採れる農耕馬が減っているという話もありましたが、タンナーさんに聞いてみたところ使っているのは普通の馬なのでたぶんガセだろうという話でした。
中級編:コードバンの特徴
中級者ともなるとコードバンは馬のお尻から採れる革だということは知っている人も多いと思います。
ですが、そこだけ終わっては面白くないので、もう少し掘り下げていきましょう。
銀付き革ではないんだよ
革には表面と裏面がありますね。表面のことを銀面(ぎんめん)と呼び、裏面のことは床面(とこめん)と呼びます。
そして、コードバンにはこの銀面がありません。正確にいうと、加工の段階で銀面を削ぎ落としてしまいます。
というのも、普通の革は銀面が一番強い層なのですが、コードバンに限っていえば銀面よりも銀面から数ミリ下にあるコードバン層の方が密度が詰まっていて頑丈なのです。
このコードバン層が存在しているのは馬だけで、牛にはないんですよね。
コードバンは貴重すぎる革だよ
コードバンは人気がどんどん上がっていて、とにかく手に入りません。
とくに、インスタグラムの影響だと思いますが、今まで一部の人たちだけで楽しんでいた素晴らしいエイジングが知れ渡ってしまいました。
知り合いのメーカーの方も「とにかく、まず素材が手に入らない」と嘆いています。
タンナーの供給量が決まっているのに取り扱いブランドが増えて行く以上、今後も入手する機会は確実に減っていくと思います。
欲しくなったら早めに手に入れることをオススメしています。
コードバンタンナーは2社だけ知っておけばOK
タンナー(製革業者)は世界中にありますが、そのなかでコードバンを鞣せるタンナーはほとんどありません。
- アメリカのホーウィン社
- 日本の新喜皮革
この2社だけを知っておけば、ほかのタンナーは知らなくても大丈夫です。
ほかにもコードバンを作っているタンナーが少数あるようですが、あまり有名ではありませんし、とくに知らなくても大丈夫です。
というか、エイジングでいうとホーウィン社と新喜皮革以外に名前が上がることがないのが実情です。
※レーデルオガワとは
たまに「レーデルオガワ製」というコードバンを見かけることがあると思います。
じつは、タンナーにも色々あって、レーデルオガワは鞣しは行わず、革のフィニッシャー(最終工程)をしています。
つまり新喜皮革が鞣したコードバンを色付けするのがメインのタンナーなんですね。
染めの技術力が素晴らしく、透明感のあるエイジングに定評があります。
素材に「水染めコードバン」と書かれていたら大体がレーデルオガワ製だったりします。
≫ 「レーデルオガワ」は何者なの!? という疑問を解決します!
コードバンの名前の由来
コードバンには謎が多く、名前の由来とか、発見された経緯などがよく分かっていない状態です。
有名なのは、Wikipediaの下記一文。
通説ではイスラム期スペインのコルドバ地方特産の高級なめし山羊革(コードバン cordovan)に似ていることから、同じくコードバン又はコルドバ革と呼ばれるようになったと言われている。
しかし、その起源は未だ謎のままであり、文献も見つかっていない。
また、アルゼンチンにもコルドバ地方は存在しており、馬革のコードバンがスペインからきているのか、アルゼンチンから来ているのかは不明。
~引用:Wikipedia~
赤字のところを見てもらえれば分かるように、コルドバ地方にちなんだっぽい起源はあるものの、それが本当なのかエビデンス(証拠)がないということです。
まぁ、正直な話をすると、品質が良ければ名前の由来なんてどうでもいいとは思うんですけどね。
上級編:質感の高さはどこから来るの?
前述のとおり、コードバンは普通の革と違って銀面(革の表面)がありません。
でも手に取ってもらえばすぐわかるぐらいハリのある革です。
その強度は、なんと牛革の3倍。
硬質な素材だからこそ出せる奥行きのある透明感が、コードバン最大の魅力なのです。
革の中から削り出すので、宝石を削る工程に例えて、革のダイヤモンドと呼ばれることもあるぐらいです。
コードバンの経年変化は至高!
コードバンのエイジングはかなり異質で、ヌメッと光るんですよね。画像は手持ちのシェルコードバン二つ折り財布です。
牛革の中でもブライドルレザーなんかは上手にエイジングさせればキレイに光るのです。
が、やはりコードバンと比べたら月とすっぽん。ツヤ感でいえばコードバンに勝るものはありません。
よく手入れされたコードバンの財布は本当にエグい輝きを見せてくれます。
磨き方によっては手や顔が薄っすら映るぐらい光るので、手に入れたらぜひエイジングを楽しんでほしいです。
▼当サイトでもエイジング画像がいくつかあるので参考にしてみてください
≫ 【画像まとめ】革財布のブランド別経年変化(エイジング)を集めました!
コードバンは脱皮という最強の技がある
これを知っているとかなりのマニアなのですが、コードバンの脱皮という究極奥義があります。
やり方は簡単で、メラミンスポンジで擦るだけ。
元々のコードバンは起毛を寝かせている状態なので、「起毛の部分を削り取ってさらに輝きを増す」という変態的な発想です。
メラミンスポンジはヤスリみたいに削り取る効果がありますが、やりすぎると元に戻せなくなる両刃の剣です。
高価なコードバンで失敗しても泣かない覚悟ができた人だけに許された裏技的手法。
僕も革靴でやりましたけど、気持ち悪いぐらい光ります。
コードバンの手入れ方法
コードバンは牛革に比べると気難しい素材ですが、手入れはそこまで難しくありません。
基本的にはクリームを薄く塗って、柔らかいネルや布などで拭き上げます。
起毛革を寝かせているという構造上、磨く方向があるので注意してください。
▼コードバンの財布を手入れしたときの話もどうぞ
【保存版】これで失敗しない!シェルコードバンの財布を手入れした方法まとめ
心配ならコードバン用のクリームを使おう
コードバンには銀面がないということで、ベタベタとクリームを塗ると表面が荒れる可能性があります。
僕も牛革のようにザックリとクリームを塗ってしまって修正に大変な時間がかかりました。
なので慎重に、できる限り薄く、ちょっと少なすぎない?という量から塗っていきましょう。
手入れになれてなくて心配ならコードバン専用のクリームを使うのが一番いいと思います。
個人的にオススメなのが、仕上げに長谷革屋のワックスを塗ることです。
(※コードバンで有名なレーデルオガワの取締役が作ったブランドのワックスです)
レザークリームで保湿をしたあと、ワックスでピカッと仕上げておけば起毛がキレイに寝ていい感じに光りますよ。
使い始めはどうすればいいの?
コードバンの財布を買ったときは、まずクリーム、もしくはワックスで手入れをして最低限の防水対策をしておきましょう。
ついやってしまいそうになりますが、防水スプレーを使うのはNGです。
試しに一度やってみましたが、ツヤが消えて磨くのに大変な思いをしました。
水に弱いのに防水ができないという不遇なため、緊張感のあるスタートを切ることになりますね。
ただ、クリームを塗って油分を補充しておけば、小さな水滴ぐらいでは水ぶくれになりません。
コードバンの財布はどこで買える?
コードバンはどこのブランドでも扱えるものではなくて、特定のブランドでしか手に入りません。
とくにシェルコードバンを扱っているホーウィン社は特別な取り決めがあるらしく、革を卸しているブランドが決まっているようです。
ほかにもありますが、この5つのブランドが有名どころです。
中でもココマイスターとGANZOの2社は人気が高いですよね。
また、キプリスには幻のナチュラルカラーコードバンがあるので、革マニアは必見ですよ!
まとめ
コードバンは人気の高さとは裏腹に、水が弱点という扱いの難しい革だと思います。
革に慣れていない人が「高級な財布だぜ!」と思って買ってみたものの、すぐに駄目にしてしまった、、、なんていう話も聞きます。
でも、使い込んだらカッコイイし、オシャレだし、渋いし、なんとかして使いこなしたい!そう思わせてくれる革でもあります。
年々希少さが増してきて、なかなか手に入りにくくなってしまいましたが、まだ頑張れば買えるのが嬉しいですね。
もしかして、あと十年もしたら素材自体がなくなっている可能性もあるかも。。。
ということで今回はコードバンの解説でした。
▼コードバンの財布を手入れしたときの話もどうぞ
【保存版】これで失敗しない!シェルコードバンの財布を手入れした方法まとめ
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